「お前なんか嫌いだ」
嫌悪も憎悪もまるで見えない表情で兄は言う。1たす1は2です、と言うのと同じような平坦なトーン。耳に馴染む心地よい声で、俺を嫌いだと言う。
冗談なのか本気なのかわからない。真面目が服を着て歩いているみたいに言われがちだが、これで結構嘘つきなのだコイツは。(俺にだけ、かもしれないが)
俺にとって、この世で一番難解な生き物はこの兄だ。
「大嫌いだ」
繰り返しそう言って俺の顔をじっと見つめる。
昔はよく大好きだと言ってくれていた。綺麗に笑って「俺もお前が大好きだよ」と。
言っていたはずなのに。
突然、好きは嫌いに置き換えられた。そして呆然と兄を見る俺にむかって、綺麗に笑うのだ。
あのころ俺を好きだと言ったのと同じ、綺麗な笑顔で。
今日もまた。
馬鹿みたいに傷ついている俺の目の前で
兄は綺麗に笑った。
(そうやって俺が確かめているんだってことに)
(いつまでたっても阿含は気づかない)
ハウマッチラブミー?